皆さん、おはこんばんちは。おーわ(@mof_mof08)です。
デジタル写真の画質を決める大きな要素となるレンズの性能。
そのレンズの性能を示す指標としてMTF(Modulation Transfer Function)曲線というものがあります。
一見するとちょっと取っ付きにくい印象のあるこのMTF曲線…今回はそんなMTF曲線とはいったいどのようなものなのか、読み解く際の基本的なポイントについてなるべく分かりやすく解説していきます。
MTF曲線とは
MTF曲線はレンズ性能を評価する指標のひとつで、被写体の持つコントラストを像面上でどれだけ忠実に再現できるかを空間周波数特性として表したものです。
交換レンズのカタログやメーカーのサイトなどで、以下のようなグラフを見たことがあるという方もいらっしゃると思います。
MTF曲線を読み解くことによって、交換レンズのコントラストや解像度、ボケの自然さといったレンズの性能をある程度把握することができます。
MTFは基本的には絞り開放(F値が最小)で測定したデータとなります。
そのため、絞ったときにはグラフとは異なる結果が出てくる可能性があります。
また、色収差などグラフ上では把握できない要素もあります。
MTF曲線の基本的な読み方
MTF曲線が交換レンズの性能指標だということはなんとなーく把握していただいたところで、ここからはMTF曲線の基本的な読み方について紹介していきます。
縦軸と横軸の定義
まずはMTF曲線の縦軸と横軸についてざっくりとまとめると、次の通りとなります。
- 縦軸:コントラスト値
- 横軸:イメージセンサー中心部からの距離
縦軸はコントラスト値(明暗差の表現力)を表し、グラフの曲線が1(100%)に近いほど明暗部の描写に優れているということになります。
一方で横軸はイメージセンサー中心部からの距離(像高)を示したもので、0が中心部で最大値が四隅となります。
ちなみに横軸の長さは交換レンズがカバーするイメージセンサーの大きさによって変わってきます。
上記で紹介したMTF曲線はフルサイズ対応のレンズのデータですが、横軸がだいたい22mmぐらいまで用意されています。
フルサイズセンサーでは中心部から四隅までの距離が約21.6mmとなるため、横軸がそれに対応する形となっています。
APS-Cの場合は約14.5mm、マイクロフォーサーズの場合は約10.8mmとなり、横軸もそれに応じて短くなってきます。
各曲線の定義
MTFは基本的に2色+2種類(実線・点線)、合計4本の曲線で構成されますが、それぞれ空間周波数と方向を示しています。
2色の線は空間周波数で、それぞれ低周波と高周波を意味しています。
空間周波数は1mmあたりの正弦波の本数(x本/mm)を示したものとなっていて、この正弦波がどこまでコントラストを表現できるかという指標となります。
すべての正弦波で正確にコントラストが表現できれば100%(1.0)ということになります。
一般的にフルサイズ対応レンズの空間周波数は低周波が10本/mm、高周波が30本/mmで示されます。
APS-C対応のレンズの場合は空間周波数が1.5倍、マイクロフォーサーズの場合は2倍で表記されています。
一般的に低周波が100%に近いほどヌケが良いレンズ、高周波が100%に近いほど解像力が高いレンズといわれています。
また、レンズの総合的な指標として低周波(10本/mm)のMTF特性が80%(0.8)以上あれば優秀なレンズ、60%(0.6)以上あれば満足できる画質が得られるとされています。
実線および点線は方向を示していて、実線がS方向(サジタル方向、放射方向)で点線がM方向(メリディオナル方向、同心円方向)となります。
ちなみにグラフ上の実線と点線の剥離が少ないほど自然なボケを描写するレンズといわれています。
MTF曲線からレンズ性能を読み解いてみよう
ここまでMTF曲線の概要と基本的な読み方についてざっくりとお話をしてきましたが、何はともあれ実際に読んでみた方が理解も深まると思います。
ということで、ここからはいくつかのレンズのMTF曲線を例に取りながら実際に読み解いていきましょう。
ズームレンズの例
ズームレンズの場合はMTF曲線が2つ用意されていますが、これはズームをまったく伸ばさない状態(ワイド端)と最も伸ばした状態(テレ端)それぞれの光学性能を示したものとなっています。
まずはワイド端ですが、低周波(10本/mm)については中心部から周辺部にかけて80%を超え、四隅付近でも60%を超えています。
低周波はコントラスト(明暗部の表現力、ヌケの良さ)の指標となりますが、全体を通じて非常にヌケが良いということが見て取れます。
一方で高周波(30本/mm)については中心部付近では80%を超えていますが、周辺部から四隅へ向かうにつれて急激に下降していることが分かります。
高周波は解像力を測る指標となりますが、中心部付近の解像力は非常に良好で、四隅に向かうにつれて甘くなる傾向ということが伺えます。
低周波、高周波ともに実線と点線の剥離はそれぞれ小さいことから、ワイド端でのボケは自然な傾向にあるということが分かります。
続いてテレ端ですが、低周波については中心部〜四隅の全域でほぼ90〜100%となっていて、全域でヌケが良好であることを示しています。
一方で高周波については中心部付近では80%を超えているものの、周辺〜四隅にかけては点線が実線から剥離する形で下がっていることが分かります。
中心部付近では解像力は良好ですが、周辺部〜四隅にかけては少々甘くなる傾向だということが見て取れます。
ボケ味については周辺部〜四隅にかけて高周波の実線と点線が剥離していることから、少しクセのあるボケになることが見受けられます。
単焦点レンズの例①
先ほどのズームレンズとは異なり、単焦点レンズの場合は焦点距離が固定となるためMTF曲線は基本的に1つのみとなります。
低周波については中心部付近で90%超と高くなっていますが、周辺部から四隅にかけて実線が点線から剥離する形で下がっていく傾向にあります。
高周波については中心部付近が70%程度で、そこから実線・点線ともに緩やかに下がっていく形となっています。
中心部付近はヌケ、解像力とも良好、周辺から四隅にかけてはフワッとした感じの描写のレンズという感じでしょうか。
単焦点レンズの例②
続いても単焦点レンズのMTF曲線ですが、単焦点レンズなのにも関わらず3つもMTF曲線が用意されています。
先述したとおり、MTF曲線は基本的に絞りを開放(F値が最小)にしたときの光学性能を記したものとなっています。
しかし実際にはレンズの光学性能は絞りによって変わってくることから、一部のレンズ(主に高級レンズ群)では絞りごとにMTF曲線が用意されていることがあります。
今回の例ではF1.4、F4.0、F8.0のMTF曲線が用意されているため、より詳しくレンズの性能を知ることができます。
まず、F1.4では中央部付近の低周波が非常に高く、周辺部についても概ね60%を超えていることから、全般的にヌケは良好だということが見受けられます。
これがF4.0になると周辺部も含めてヌケがほぼ100%に張り付き、解像感についても非常に良好だということが分かります。
さらにF8.0になると低周波、高周波とも非常に高い水準となり、特に低周波は100%近くに張り付いた状態と、非の打ち所がない光学性能だということが見て取れます。
まとめ
交換レンズの性能を知るための指標ことMTF曲線。
すべてが分かるわけではありませんが、そのレンズがどの程度の光学性能(コントラスト、解像力、ボケの美しさなど)を持っているかを知る上で非常に役立ちます。
本記事がMTF曲線を理解するための第一歩となれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございますm(__)m
参考サイト
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